装甲悪鬼村正の一節

      生と死の狭間に己を笑い恍惚として自ら忘るる
      されば夜明けの嘆きを鐘に神曲の幕よいざ上がれ

      奇跡を行う聖人は衆生を救い神を呪って嘔吐する
      黄金の兜の覇王は万里を征し愛馬と共に川底へ沈む
      湖の美姫は国を捨て愛を選び糞尿に溺れて刑死する
      孤赤児は蚯蚓の血を母の乳とし三夜して腹より腐る
      生命よこの賛歌を聞け笑い疲れた怨嗟を重ねて
      生命よこの祈りを聞け怒りおののく喜びを枕に
      百年の生は炎と剣の連環が幾重にも飾り立てよう
      七日の生は闇と静寂に守られ無垢に光り輝くだろう
      獣よ踊れ野を馳せよ唄い騒いで猛り駆けめぐれ
      いまや如何なる鎖も檻も汝の前には朽ちた土塊

      生と死の選択を己に課す命題として自ら問う
      されば嘲笑の歓喜する渦に喜劇の幕よいざ上がれ

      嵐の夜に吼え立てる犬は愚かな盗賊と果敢に戦う
      温かい巣で親鳥を待つ雛は蛇の腹を寝床に安らぐ
      木漏れ日の下で生まれた獅子は幾千の鹿を飽食し
      せせらぎを聞く蛙の卵は子供が拾って踏みつぶす
      生の意味を信じる者よ道化の真摯な詭弁を聞け
      死の恐怖に震える者よ悪魔の仮面は黒塗りの鏡

      生命に問いを向けるなら道化と悪魔は匙を持ち
      生命を信じ耽溺するなら道化と悪魔は冠を脱ぐ
      獣よ踊れ野を馳せよ唄い騒いで猛り駆けめぐれ
      いまや如何なる鎖も檻も汝の前には朽ちた

      生と死の狭間に己を笑い恍惚として自ら忘るる
      されば夜明けの嘆きを鐘に神曲の幕よいざ上がれ

 

 

この長い詩は初めてすぐの場面で出る。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/B002K6FA16/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1355418025&redirect=true&sr=8-1

正直なところ、初めて読んだとき意味がわからなかった。言葉が難しい以上に内容が理解できなかったからだ。だが、この詩は何度も大事な場面で出てくる。そして、物語が進む毎にその意味が少しずつ理解できるようになってくる。今でも、言葉遣いの難しさから意味を完璧に理解できているとは言えない。しかし、それでもこれで伝えたかったことの大筋は理解出来たと思う。言葉がわからないのに理解するとは不思議なことではあるが、物語の中で幾度も出て、それが意味の繋がる場面で繰り返されることで自然と理解できるものがあった。不思議な体験だった。物語の持つ不思議な力の一つだと思う。ライトノベルやゲームなどではこういった難しい言い回しはほとんどなく平易な文章のものが基本だ。だが、難しい言い回しだからこそ、理解できたときに胸に刻まれる。これはものすごく難しいことで、だれにでもできることではないだろう。だが、こういう方法もあるのだということは知っておいてほしい。リスクのあるやり方だが、それに見合うリターンは確かにあると思う。

それはともかく、装甲悪鬼村正は非常に稀有な体験をさせてくれるゲームだと思う。各所で名作として伝えられるだけのものではあるので、未プレイの方はとりあえず体験版をやってみるところから薦める。体験版があまりにもおもしろかったせいで、速攻で体験版を終えてしまい、実物がAmazonから届いたら寝る時間を削って遅刻を2度やってしまった俺が言うのだから間違いない。ただ、どんなにおもしろくても現実に支障のない範囲でのプレイをするように忠告しておこう(遅刻とかゲームのためにサボるとかダメ絶対)。