負のピタゴラスイッチ ラブライブ!12話

それはあまりにも痛々しかった。
ことりはふさぎ込み、ほのかは悄然とし、絵里はほのかの核心に迫り、にこ先輩は激昂し、真姫はにこを押しとどめ、海未はほのかに失望した。

f:id:hidamalar:20130403092204p:plain

ラストだけでとんでもない密度でドラマが繰り広げられたが、あれは本来起こるべきはずのことではなかった。すべてが悪い方向でピースがハマった結果、あの修羅場が出来上がってしまった。あれを見て感じるのは彼女たちの"未熟さ"と”純粋さ”、そして”若さ”。

どうしてあんなことになってしまったのか。

このすべての原因は絵里にある。それを説明する前に一つ言っておきたいのは、原因がだれか一人にあるとしてもそれは全員の責任だ。

「体調管理を怠って無理したほのかも悪いけど、それに気付かなかった私たちも悪い」

ほのかと絵里に大きな責任があるけど、それを止められなかったみなに等しく責任はある。それを念頭に置いてもらいたい。

さて、なぜ絵里に責任があると見做したか。まず、考えるべきはほのかがどういう考えを持った人間か。ほのかは常にポジティブで目標を持ったらとにかく突っ走る人間だ。だから風邪をひくまで練習をしたし、ことりの本心を見ることなく練習に没頭した。こういうタイプは突っ走っている間は強いが、つまずいたり立ち止まったりすると途端に弱さが出る。

f:id:hidamalar:20130403092250p:plain

ポジティブにしか考えられなかった精神が全く逆に働き、すべてをマイナスにしか考えられなくなり一気にネガティブに傾く。

今回のケースだと、ライブの失敗とことりが離れることが重なったことでほのかの精神状態は最悪になりネガティブにしか考えられなくなっている。すべてに対して悲観的で、やる気が根こそぎなくなっているのだ。ほのかと接するならばこの精神状態にある可能性を考えておくべきだった。

あの場で絵里はもっともやってはならないことをやってしまった。”ほのかがどうしたいのか”を聞いてしまった。通常状態ならばポジティブシンキングで諦めずにライブをやることを目指しただろうが、現状のほのかは真逆にある。

スクールアイドルへの情熱も消えている。

そんな状態で答えを聞いたら返ってくる言葉は一つしかない。絵里がやるべきことはあの場では一つだった。

ほのかを連れ出し二人で話し合う。これがベターだ。

全員の前で話させてしまうとほのかは発言に責任を取らなければならなくなる。
二人で一度話す。これは別に絵里でなくても構わない。海未でも希先輩でもいい。ネガティブに入っているスイッチを切り替えなければならない。

f:id:hidamalar:20130403092351j:plain

あの場で最悪だったのはにこ先輩がいたことだ。にこ先輩は激情型の人。人の真意など考える前に反応してしまう。にこ先輩は仮にも部長で上級生。怒らせてしまえば、チーム内でなんらかの責任を取らなければならなくなってしまう。絵里はそこを察してあの場でほのかにしゃべらせるべきではなかった。

あの場で驚いたことがもう一つあった。海未がほのかに対して「最低です」と言ってビンタしたことだ。

f:id:hidamalar:20130403092424j:plain

どこまでが本心で、どこまでが計算で言ったのかわからないが、あの行動はうまい。ビンタされることは一つの責任の取り方になる。罰を受けたとしてほのかは免罪符を一つもらったこととなる。チームをやめるといってなんの罰もなしに帰ってきてしまえば、チームの規律は緩む。それを回避する意味でも海未の行動はよかった。

海未とほのかは仮にも幼馴染で親友なのだから、ほのかの性格は理解しているはず。落ち込むのも一直線というのを知っていれば、彼女がスクールアイドルをやめる可能性も考えていたのかもしれない…

以上、あの修羅場が生まれた原因には、絵里の性格の良さがマイナスに働いたことが大きい。どんなときにも人の話しを聞こうとするのはいいが、相手の性格を考慮するべきだった。

それを考えにいれてないからこそ絵里もまだ若い。なんでも出来そうな彼女もまだ高校生。生の感情のぶつけあいを見るのはつらいかもしれないが、彼女たちの若さが見えるようで気持ちがいい。

ほのかも、にこも、海未も、希も、絵里も、若くまだまだ未熟。

だからこそ、まだまだ伸びしろがあってその成長が楽しみなのだ。成長する姿をみるのは楽しいけど、成長してしまってたくましくなってしまうのは嬉しくもあり悲しくもある。

まだ若い彼女たちの姿を見て、成長を感じて感動したり、落ち込んでる姿を見て励ましてあげたくなったり、そういう見守る側が持つべき姿勢で彼女たちを見ていればいいんじゃないかと思う。

f:id:hidamalar:20130403092643p:plain

まとめると、あの修羅場の出来上がりかたがすごい。脚本がすごくうまく。ネガティブに入ったほのか、話しを聞こうとする絵里、怒るにこ、手を出せない下級生たち、関与しようとしない希、ずっと話しを聞いて最後に手を出した海未、ピタゴラスイッチのようにうまくハマっていくんだけど、それがすべてマイナスに向いているのが見ていてつらい。みなが冷静な判断を出来てないことを気づいて場を仕切り直せば、それだけで変わるとわかるだけにきつい。

でも、あの生の感情のぶつかり合いが楽しいのだし、あれでいいんだけど、あれを受け入れられる人はここまで見てない気もする。

ポジティブな物語が好きな人にとって終盤になってしまってる。そしてラブライブ!の魅力はポジティブさ。これもうまく悪い方向に入ってる。

でも今までの話でもみんなに影があるのは見えてたし、視聴者も一筋縄ではいかないめんどくさい人間が多いようにも思える。そのあたりがどうハマって最終的な評価がどうなるのか。個人的にそのあたりにも注目したい。