トップをねらえ!2 宇宙怪獣とはなにか

トップをねらえ2!4話のコメンタリー。

榎戸さんと出渕さんの話がすごいおもしろかった。榎戸さんは『トップをねらえ2!』の脚本家。

フリクリ』や『少女革命ウテナ』のアイデアは一体どうやって生まれたのか全く想像がつかなかったけど、榎戸さんの話を聞いて少しだけわかったことがある。おそらく榎戸さんはアイデアが先で、そのあとに理屈をつける人だ。トップ2にしろフリクリにしろ榎戸さんの作品(GAINAX全般同じだけど)は説明がない。大まかな話の筋を追える情報だけ与えられて、細かい部分は副読本がないとわからない。悪くいえば視聴者置いてけぼりなんだけど、おおまかな部分だけで十分に楽しめるつくりになってて、なんとなく感動させられる。よくわかんないけどめっちゃおもしろいと言わせる力がある。これは榎戸さんの脚本に筋が通ってるからで、その場しのぎで人間ドラマを構築して、細かい設定や話の流れを投げてるわけじゃない。理屈がわからなかったとしても、大体はただ説明しないだけ。

トップ2の宇宙怪獣はトップレスで居続けたものたち。20歳を過ぎればトップレスの力を失う世界で、それを超えて持ち続けることは世界の諸法則からの逸脱だ。世界のルールから抜け出たものが宇宙怪獣で、だから異形の姿で異常なエネルギーを持ってる。

でも、それをすることはトップレスのわがまま。トップレスでいつづけることは大人になろうとしない態度と同じ。トップレスという全能感を失わないためにそのままでいつづけようとするのは、いつまでもサンタクロースからのプレゼントを待ち続ける大人のようなもの。失わないことに執着しつづけた結果『怪獣』になってしまった。なんかの漫画で、80歳過ぎても大きな権力のトップに居続けるじいさんを『化物』と呼んでたけど、これも同じ。力に執着し続けて、その座に居続けることは凡人や下の者達からすれば『化物』以外の何物でもない。榎戸さんはそれを『宇宙怪獣』とした。

榎戸さんはこれを思いついてから、細かい設定を詰めていったらしい。大きなテーマを設定してから、それを基にして論理をつくる。その論理付けがうまいから、設定がめちゃくちゃにならない。

設定と話の流れをコントロールできずにテーマがうやむやになった作品は数え切れないほど見た、逆にテーマを優先して設定と話の流れがめちゃくちゃになった作品も数え切れないほど見た。

榎戸さん、ひいてはGAINAXがすごいのはテーマと設定のすり合わせがうまいこと。話の全体の流れが見えているからかはわからないが、きちっと作品の手綱を握って見せたいものを見せられている。榎戸さんの話を聞く中で強く感じたのはそれだった。