コンテンツを二次創作から考える-支える者の理想の在り方

 pixivというSNSをご存知だろうか?一言でまとめるならイラスト投稿型SNS。プロのイラストレーターの投稿も多くイラスト好きなら今や必見となっているサイトだ。私は現在800人以上フォローしているが、週間で200件前後の投稿があるため定期的なチェックがかなり大変で少し参っている。投稿されるものはイラストか漫画。今流行っている作品のイラストが多いため、イラストを描くサイドはどういう作品にハマっていてどういう作品を描きたいと思うのかが少しだけわかってくる。これも私がフォローしているだけの範囲なので自分だけしか役に立たないことだが、自分の場合やっぱり萌え系アニメのイラスト投稿が多く自分の趣味とイラストレーターの趣味は被っているんだとしみじみ実感した。また、すぐ下にリンクを貼っているが、艦これにおけるカップリングの統計をpixivで取った人が2chでその結果をまとめたものを出していて、これも非常におもしろい調査結果が出ている。アニメを見ていると赤城の大食いキャラ、那珂ちゃんのアイドルキャラとしての振る舞いなど、二次創作で見たものがそのままアニメ化されたようであり二次創作の影響が大きい。この統計は原作に与えられた影響を検証する際に役に立つ。この結果を頭に入れて艦これを見るとおもしろい発見も出来るだろう。pixivで活動している作家の多くは同人活動もやっていて、同人での発展も目覚ましい艦これに注目しているという人はpixivも見ておくといいだろう。


【艦これ】Pixivにおける艦娘同士のカップリングの人気と傾向 : あ艦これ ~艦隊これくしょんまとめブログ~

  ここ最近、pixivを見ていて力を伸ばしていると感じる作品がもう一つある。『アイドルマスターシンデレラガールズ』略称『デレマス』、私はこの作品をまだ一話も見ていないが武内Pがやたらかわいいことを知っている(下のリンクは参考資料)。

「アイマス1000users入り」の画像投稿作品の検索 [pixiv]

今pixivを見ていて思うことはしぶりんがいかにヤンデレかわいいよりも武内Pが人気がこんなに人気があるのはなぜなのかということだ。pixivを見ている人なら同じことを感じている人も多いと思うが、ほんとうに武内P大人気。一番人気といってもいいような気がする。冗談ではなく。もちろん、デレマスのアイドルはかわいいからイラストの場合武内Pが出てくることは少ない。だが、漫画では間違いなくほとんどのものが武内Pが出てくる。

pixivの漫画は1,2ページのものも多いため内容を大別するとショートギャグかショート萌え(2ページ以内の短い話で萌えさせるもの、造語)かショートほっこり(2ページ以内でほっこりする読後感を与えるようなもの、造語)に分かれる。デレマスで現在最も勢力があるように感じられるのはショートギャグとショート萌えを混ぜたようなものだ。武内Pがボケ、アイドルが突っ込む。ここにアイドルのかわいい反応を巧みに混ぜるのが今のデレマス漫画の肝になっているように思う。思うに武内Pはボケとして極めて優秀なのだろう。クリエイターからすればネタがかなり考えやすくキャラも掴みやすい天然ボケのキャラになっているんだろう。ここに武内Pを考えだしたクリエイターの凄みが出ている。二次創作がしやすいキャラということはキャラが立っていて尚且つだれでも掴みやすいということである。ここまで愛されるプロデューサーが生まれるとだれが考えただろうか。赤羽根Pのように一生懸命頑張ることだけが取り柄の類型的で無難なキャラではなく、制作側は武内Pのキャラを立たせに来た。これは非常にリスクのある選択だ。私はその心意気だけで高評価を下してしまうが、それが成功している現状というのがまた凄い。最終的な評価がどうなるにせよこの武内Pという稀有なキャラが生まれたことはアニメ好きとしてしっかり記憶しておくべき出来事だ。

また、同様の注目を艦これにもしていたが、艦これはこれを避ける方向に動いた。艦これにおけるプロデューサーとは言わずもがな提督のこと。アニメで提督の出番は今のところない。おそらくアニメに提督が出てくることはないだろう。小説では提督の出番があるようだが、横須賀、呉鎮守府など各地域の鎮守府毎に提督が存在する複数提督制を利用し、提督のイメージを固定しないようにする配慮が見られる。

艦隊これくしょん-艦これ- 陽炎、抜錨します!とは (カンタイコレクションカンコレカゲロウバツビョウシマスとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

アニメでこれをしないのはシナリオ上の問題*1か、アニメの影響力を考えた上でだろう。艦これの二次創作のおもしろさは自由度の高いという一言に尽きる。ショタ提督、オネエ提督、老提督、T督など二次創作では様々な提督がいる。この想像性を狭めることは艦これというコンテンツそのものに打撃を与えかねない、という判断があったのではないだろうか。艦これはどんなものでも受け入れてしまえる懐の深さがある。深海棲艦の設定を考えてシリアスな物語を想像するも良し、第六艦隊を中心としたロリな癒やしを求めるも良し、北上大井のようなカップリングを考えて萌えるも良し、金剛が一番かわいいという事実、どんな欲望も受け入れられるのが艦これが画期的なコンテンツと成り得た大きな要因の一つだ。

 念の為に言っておくが、これは艦これに対してデレマスが優れていると言っているわけではない。選択したものが違うという話でしかない。なによりおもしろいのはここに挙げた二作で選択したことが真逆でありながら両作とも大成功を収めているという点だ。これはコンテンツとしての性質上の違いにより最適戦略にも違いが出るという顕著な事例だろう。アイマスにプロデューサーがでなければ艦これのようになれたのか、艦これに提督が出ればアイマスのようになれるのか、これは分かりようのない話だがおもしろい問いとなるだろう。私としては両作とも最適な戦略を選択したと考えているし、逆の選択をするのはあり得ない話だと考えているが、与太話としてなら友人と話してみるのも一興だろう。良ければ今日の話のタネにでもしてもらえれば。

 

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*1:一つ以上の鎮守府を出してしまうと各国の状況等説明しなければならないものが増えてしまうこと、説明過多はシナリオの質の低下をもたらす。そして設定が語られ始めれば、同じ艦娘は他の鎮守府でも存在するのか(同一艦娘の量産問題)などの枝葉の部分に視聴者の興味を移し兼ねない。今のままファンムービー路線で進めるなら、キャラへの興味を中心に視聴者の興味を惹き萌え+バトル作品として全うしたいと考えるのが筋だろう。