別冊少年マガジン新連載 生まれ変わっても君を好きになる 『不死身ラヴァーズ』

別冊少年マガジンで今月から始まった新連載『不死身ラヴァーズ』

この物語は小学生の主人公”甲野じゅん”が、同級生の”長谷部りの”に告白するところから始まる。

彼女の返事はOK!

しかし、それだけでは物語は始まらない。返事をしたあと彼女はすぐに消えてしまう。失踪や行方不明ではなく文字通りこの世から消えたのだ。

 ”それで……その…長谷部が…この世から…消えたんだ”

自分以外の誰もが長谷部のことを忘れていた。長谷部のいた形跡は一切なくなっていた。このあと、彼は消えた彼女への思いを断ち切れるわけでもなく小学校を卒業して、中学に上がる。しかし、そこで彼は待ちに待った”長谷部りの”との再開を果たす。だが、この”長谷部りの”は彼のことを覚えていなかった。

”この新入生 長谷部りのの正体はオレの一つ下の学年であの長谷部とは全く赤の他人でどっからどう見てもギャル部で でも間違いなく長谷部りのだった”

同一人物なのに全くの別人。

ここから漫画は意外な展開を見せる。ファンタジー漫画から部活漫画への転換だ。

” 長谷部りの”は書道部に所属していて、既に最年少書道家として名を馳せていた。

しかし、部ではその圧倒的実力ゆえに孤立していた。長谷部は、部員たちとの溝を埋めることを望んでいて、そのため団体戦の書道大会に出ることを望んでいた。だけど、部員たちは長谷部の実力に気後れしてしまって、乗り気ではなかった。そこを主人公が両者を結びつける。

この主人公、とにかくポジティブで熱血体質。

”部長さんしっかりしろぉぉおお!!うまいとかへたとかどうでもいいんだよ!!出たいのか 出たくないのか どっちだ!”

甲野くんが部員たちを奮起させ、長谷部が先生として部員たちを教えていくことになる。ここから頑張る主人公と長谷部のりは、ただひたすらにかっこよく美しい。でも猛練習にはやる気のない人間はついてきてくれない。次第に部員たちの心が彼らから離れていき、遂にはバラバラになる。

”優勝なんてとんでもない”

”オレたちは記念に参加できるだけで…なぁ”

”長谷部さんとは違うんだよ”

”そこまで ついていけないよ”

 長谷部はこの言葉に落ち込んでしまう。だが、甲野がまた前を向かせる。

 ”ちゃんとこのノートの通りやればできるんだろう? 優勝 ”

” ……できる だってみんなにはそれだけの実力があるのに”

”じゃあ それを本人に伝えなきゃな”

彼らは部員の説得に走る。自分の思いを真摯に部員に伝える。

f:id:hidamalar:20130409190407p:plain

”全員の力を合わせて全力で取り組めばきっと出来ます 優勝!!”

”誰一人として欠けちゃいけないんです!”

そうして思いが通じて部員たちは再び集まる。大会までの一ヶ月のすべてを書道に費やしてその日を迎える。

f:id:hidamalar:20130409215621j:plain

しかして結果は……

 f:id:hidamalar:20130409215725j:plain

届かなかった。みんなが一丸となってすべてを費やしても願いが叶うことはなかった。しかし、結果がダメならそこになにも残らないのだろうか。

否、たとえそれが人に認められることのない努力であろうとも、やった本人たちにとっての財産足りえる。この涙は夏は、金には変えられない価値を持ったものだ。

       f:id:hidamalar:20130409222426p:plain

 そして、願い叶わなかったが、一つの思いに実が結ばれようとしていた。甲野の常に全力を尽くす姿に長谷部が惹かれていたのだ。この日、二人で帰り道を歩いていた。そこで告白される。

”私…甲野先輩のおかげでもっと書道が楽しくなりました 仲間ができてもっと書道が好きになりました ありがとうございます”

”オレ…やっぱり…長谷部のこと 好きになって…よかった…”

”私も…甲野先輩のこと…好きです”フッ

その瞬間、彼女はまた消えた。告白して、思いが通じあって、また消えた。

f:id:hidamalar:20130409224220p:plain

彼にとって長谷部がいなくなった痛みは心臓にナイフを突き入れられたような痛みだった。そして、いなくなったことを誰も気にしない。またみんな覚えていない。

そうして中学校もまた卒業する。そして、高校生になって三度の再開を果たすが、ここから物語は加速する。

f:id:hidamalar:20130409224536p:plain

 

甲野は何度も長谷部さんを好きになって、思いが通じ合って、そして通じあってしまったら消えてを繰り返したのだ。そして、5人目まで消えてしまう。そのとき彼は倒れてしまう。

f:id:hidamalar:20130409225007p:plain

彼は決して諦めない。

でも、彼は長谷部が消えるたびに傷ついている。好きになった相手がいなくなってしまっているのだから、それに傷つかないわけがない。

でも、彼は何度でも長谷部に恋をし続ける。

なぜ?

”オレは何度でも長谷部に恋をする 田中…お前のように本気で恋をしたことのないやつにはわからないだろう スゴッいんだ…人を好きになる時の引力って…重力なんて目じゃないんだ”

  ”だから…オレ…オレ……世界一幸せだ…!!こんなに運命の出会いを繰り返せて!!!”

 

 

 彼を見ていて素直に思う、かっこいい。

何度でも同じ相手を好きになって、それを幸せだと言い切ってしまうこと。常にポジティブに相手に積極的にアプローチしていくこと。全力でなんにたいしても向かっていく姿勢。彼はほんとうにかっこいい主人公だ。出来ることをやって、何度跳ね返されても諦めない。これはすごく難しいことだ。それをやってのける甲野くんはすごくかっこいいし、すごく好きだ。

 

この作品がファンタジーとしてどれほどおもしろいかは未知数。

しかし、青春モノ、部活モノとしてのおもしろさは保証する。本誌の『AKB49』に匹敵する熱さを備えている。

内容を紹介しきってしまったように感じられるかもしれないが、この作品のおもしろさの半分も紹介出来てない。文字演出のうまさだったり、表現のおもしろさだったり、そういううまさがあって、いわゆる漫画がすごくうまいのだと思う。

別冊マガジン編集部の隠し球、巨弾新連載が始まったと思っている。ここではあえて書いてないこともいくらかあるので、この感動を是非雑誌を読んで味わってほしい。

別冊 少年マガジン 2013年 05月号 [雑誌]

別冊 少年マガジン 2013年 05月号 [雑誌]