岡田コウ『Aサイズ』

 ロリ漫画界のトップランナー岡田コウの最新刊『Aサイズ』(ヒット出版社)が2月6日に発売された。

ロリ漫画読みという限界集落の住人にとって今月は祭りである。なぜなら岡田コウ関谷あさみというロリ漫画界の二大巨頭が一年以上ぶりに新刊を出すからだ。関谷あさみさんに至っては『your dog』以来の新刊で実に七年ぶりの商業エロ漫画新刊だ。そんなわけで今月はロリ漫画月間と言っても過言ではない。

 岡田コウ『Aサイズ』については、まず押さえておくべきことがある。収録短編『つまさきだち(前後編)』の掲載誌がCOMIC LOであったということだ。

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(画像『COMIC LO』2013年11月号)

岡田コウのLO掲載、これは当時エロ漫画クラスタに衝撃をもって迎えられた。岡田コウさんの商業誌での活動の中心は『COMIC阿吽』。私の知る限りにおいてLOに岡田コウさんの作品が掲載されたことはない。LOの発行元茜新社で現在廃刊になっている『COMIC RIN』には掲載されたことがあるらしいので、そこからの繋がりを考えると不思議はないが、あのときは『岡田コウがLO移籍……!!……か?』とどこぞのスポーツ新聞の見出しのようなことを考えたものだ。

茜新社のLOに掲載された原稿がヒット出版社から発行される単行本に収録されるという事態になったのは、LO掲載時の契約の際にそこまで契約に含めていたのだろう。LOに載ったのも『つまさきだち』以降は一本もなく、岡田コウさんの商業の主戦場は未だに『COMIC 阿吽』だ。岡田コウさんのLO掲載の目的は、とりあえず一本載せて雑誌との繋がりをつくること、LOというロリ漫画界のメッカに掲載されること(キャリア形成)、といったところが考えられるが実際は聞いてみなければわからない。

 『つまさきだち』についてはもうひとつおもしろいことがある。単行本化にあたって髪にトーンをかけるという修正を入れている。雑誌掲載時には金髪か白髪と考えられたキャラが茶髪のように見えるアレンジが加えられた。

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 さらに演出、セリフについても単行本で大幅な修正が加えられた。

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 髪の変更については演出の変更と同義である。上に挙げた画像からでもわかるが、トーンの有無でキャラの印象が全く違う。私はトーン有りの修正のほうが好きで、それが最も効果を発揮したと思ったシーンが下の画像のシーン。

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絵にとって線とは情報である。一つ線が加わるだけで情報が重くなり、絵に重みが増す。絵の重みはキャラの重みに繋がり物語に厚み与える。私が雑誌掲載時の『つまさきだち』を読んで気に入らなかった点は内容に比してキャラクターが軽かったことだ。岡田コウさんの最も魅力的な部分であるキャラの重み、実体感がいつもと比べて薄かった。それに加えて主人公ヒロイン共にキャラの感情がとっ散らかっていて、まとまりに欠ける短編になってしまっていた。

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単行本にあたって、そこが大幅に改善されていたのは流石という他ない。そして修正されたのはおそらく『つまさきだち』だけではない。『袋小路』『クラスメイト』も雑誌掲載時と比べて相当に読み味が変わっている。それについての検証はまだやっていないが、雑誌をもつ人は比べて見るとことをオススメする。